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東京歴建の裏側にある物語や想いをご紹介。

竹むら
堀田 正昭 さん 

昭和の記憶を紡ぐ甘味処|伝統を守り続ける東京歴建『竹むら』の歴史と挑戦

INTERVIEW

 1930年(昭和5年)、初代・堀田勇雄が創業した甘味処『竹むら』。東京大空襲を奇跡的に免れたこの建物は、今も多くのお客様に愛されています。創業当時からの雰囲気を今に受け継ぎながら、2030年には築100年を迎えます。

 2001年に東京都選定歴史的建造物(以下、東京歴建)に選ばれたほか、2003年には千代田区景観まちづくり重要物件にも指定されています。今回は、三代目となる現在の店主、堀田正昭(ほった まさあき)さんにお話を伺いました。
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堀田 正昭 さん
竹むら 代表取締役

竹むら 建物詳細ページ

東京都千代田区神田須田町1丁目19番地2 tel: 03-3251-2328

1930年創業の「竹むら」は、入母屋造りの木造3階建てが特徴的な甘味処です。屋根と庇により外観は4層に見え、2階欄干の竹と梅模様、「しるこ」と書かれた行燈など、昭和初期の意匠が随所に残ります。東京大空襲を免れた貴重な建物として、2001年に東京歴建に選定されています。

家業の歴史と、受け継がれる想い

堀田さんと『竹むら』の出会いを教えてください。
堀田さん:『竹むら』は、私の父母がつくったお店です。神田須田町で「本格的な汁粉屋さんをつくりたい」と創業しました。住居兼店舗だったため、私と『竹むら』との出会いは生まれたときからです。小さい頃は外で遊ぶのが好きな子どもでしたが、お店が忙しいときにおつかいへ行ったり、中学生になってからはあんこづくりを手伝ったりと、日常の中にずっとお店がありました。私は次男でお店を継がなければいけないという気持ちはありませんでしたが、お店で多くの時間を過ごすうちに自然とここで働くことを考えるようになりました。
本格的に働き始めたのはいつからですか?
堀田さん:高校卒業後、別の和菓子屋で1年間修業を積んだ後、『竹むら』に戻って本格的に働くようになりました。初代店主である父のもと、母と兄は経理まわりなど事務方を担当し、私は製造を担当しました。二十歳になった頃には製造の多くの部分を任せてもらえるようになりました。この頃から、家業を背負う責任と、長年築かれてきたこの店の伝統を継承することの重みを強く意識するようになりました。
東京歴建に選定されたときはどのように感じましたか?
堀田さん:私自身は昔からずっとこの建物で生活してきたので、あまり特別な意識は持っていませんでした。ですから東京歴建に選定されたときは、「すごいな」と驚いたのが正直な感想です。自分が暮らしてきた家が選ばれるなんて、と。選んでいただいたことを光栄に感じると同時に、これからもこの建物をちゃんと維持していけるのだろうかと少なからずプレッシャーも感じました。

 東京歴建に選定される以前から、お店にいらっしゃったお客様たちから、「本当に良い建物だからずっと残してほしい」とお話しいただくことが多くありました。そんな背景からこの建物を守っていかねばと感じていたのですが、東京歴建に選ばれたことによって大事にしていこうという想いを改めて強くしました。

歴史的建造物の保全

建物の維持管理において、どのような困難や工夫があるのでしょうか?
堀田さん:現在の建物は、創業当時からずっと使ってきたものです。修繕した箇所もありますが、建築当時のままの箇所も多くあります。そういった所は年数を経て脆くなっていることもあり、毎朝の拭き掃除でもちょっと力の入れ具合を間違うと壊れてしまうのです。昔ながらの建材は、今ではもう手に入らないものも少なくありません。日々の掃除でも細心の注意を払い、大切に扱っています。

 神田須田町で東京歴建に選定された建物の所有者と話す機会がありますが、みなさん共通の悩みを持っています。それは、年々維持管理が難しくなっていくことです。ガラスや木材など昔と同じものを手に入れるのが非常に難しくなっていますし、すでに手に入らないものもあります。修繕工事を依頼できる職人さんも年々減っています。

 私たちの建物でも、屋根瓦の傷みが大きな悩みとなっています。瓦にヒビが入ると、屋根から雨水が浸入し、木材の腐食の原因となってしまいます。毎年ゴールデンウィークには大掛かりな修繕工事を行っていますが、どう建物を維持していくのかは難しいところです。こうした状況ですので、With!東京歴建PROJECTには情報発信を含めバックアップを期待しています。

伝統の味と、未来への想い

『竹むら』にはどのようなお客様がいらっしゃいますか?
堀田さん:もちろん、常連のお客様も多くいらっしゃいますが。初めてお見えになる方も多いです。インターネットやSNSで見つけてくださるのでしょう。甘いものが好きな方もいらっしゃいますし、歴史のある建物が好きな方もいらっしゃいます。特に最近では、連続テレビ小説『虎と翼』に登場した甘味処のモデルになったことから、日々多くのお客様にお越しいただいています。店の外に行列ができることもあり、ゆっくりとした時間を過ごしにくくなってしまうことは申し訳ない気持ちですが、歴史のあるお店を今も愛していただけるのはありがたいかぎりです。
『竹むら』の未来像、そして大切にしたいことは何でしょうか?
堀田さん:創業当時から変わらない、昔からの味をずっと守り続けていきたいです。今までいらっしゃったお客様を失望させることがないよう、材料にこだわり、昔ながらの手法で味を守っていきたい。お客様の中には、かつて近隣大学の学生だったときに通ってくださっていて、今ではお孫さんを連れてお越しくださる方もいます。そんな出来事があるからこそ、昔からの味を変えてはいけないと感じています。
『竹むら』にお越しいただいた方々にはどのように楽しんでほしいですか?
堀田さん:店内で甘いものを楽しみ、建物の歴史も感じてほしいですが、それだけではありません。神田須田町には当店以外にも歴史ある建物、昔ながらの街並みが残っていますので、この街全体の雰囲気を感じてみてください。そして、この街でどんな生活が営まれていたかに想いを馳せていただければ嬉しいです。

堀田 正昭 さん
竹むら 代表取締役

竹むら 建物詳細ページ

東京都千代田区神田須田町1丁目19番地2 tel: 03-3251-2328

1930年創業の「竹むら」は、入母屋造りの木造3階建てが特徴的な甘味処です。屋根と庇により外観は4層に見え、2階欄干の竹と梅模様、「しるこ」と書かれた行燈など、昭和初期の意匠が随所に残ります。東京大空襲を免れた貴重な建物として、2001年に東京歴建に選定されています。

インタビューを終えて

 昔からの伝統の味も、昭和初期に建てられた歴史ある建物も、大切に守り続けていく。三代目当主の堀田さんは、今も毎朝7時半頃からお店に出て、開店前の準備と合わせて、店内の掃除をしています。そうして丁寧に接しているからこそ、古い建物ながら隅々まで整い、輝きを放っているのだと感じました。『竹むら』に足を運んだ際は、揚げまんじゅうやおしるこなどの甘味を楽しむのと同時に、長年大切にされてきた建物にも注目してほしいと思います。

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