With! stories

東京歴建の裏側にある物語や想いをご紹介。

立教大学 池袋キャンパス
餅田 忠 さん 

四季折々で表情を変える赤レンガ建築|学びの場として歩み続ける東京歴建『立教大学』

INTERVIEW

 1916年(大正5年)、礼拝堂の定礎式が行われ、立教大学 池袋キャンパスの建設が始まりました。当時建てられた歴史を感じる赤レンガ造りの建物が今も残るキャンパスでは、今も多くの学生がのびのびとキャンパスライフを過ごしています。

 池袋キャンパスでは、本館をはじめ6つの建物が東京都選定歴史的建造物(以下、東京歴建)に選定されています。関東大震災や東京大空襲を乗り越えた貴重な建物について、立教大学 総務部副部長 兼 施設課長の餅田 忠(もちだ ただし)さんにお話を伺いました。
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餅田 忠 さん
学校法人立教学院 総務部副部長 兼 施設課長

立教大学 池袋キャンパス 建物詳細ページ

東京都豊島区西池袋3-34-1 website: https://www.rikkyo.ac.jp/

立教大学池袋キャンパスには、本館、メーザーライブラリー記念館、立教学院諸聖徒礼拝堂、第1食堂、2号館、3号館の6棟の赤レンガ建築があります。これらの歴史的建造物と、周囲の現代的な施設、植栽が美しく調和した景観が魅力です。1999年と2001年に6棟全てが東京歴建に選定されています。

歴史ある建物の魅力を守り育てる

立教大学で働くことになった経緯を教えてください。
餅田さん:私は大学で建築を学び建築士資格を取得、ゼネコンで働いていました。しかし、昔から大学の教育環境や広大なキャンパスに魅力を感じており、いつか大学で働いてみたいと考えていました。とはいえ、どの大学でも良かったわけではありません。

 立教大学を選んだのは、キャンパス全体の雰囲気に魅了されたからです。池袋キャンパスには社会人になって資格試験で来たことがありました。その際、赤レンガ造りの建物は強く印象に残りました。「こんな環境で勉強できる学生は羨ましいな」と感じたのを覚えています。さらに調べていくうちに、歴史的建造物の維持管理や修繕に努めるだけでなく、それぞれの魅力を高めながら、いかにキャンパスメイキングをしていくか、と理念をもって取り組んでいることを知りました。その考え方に強く惹かれ、この環境ならと入職を決めました。
総務部施設課ではどのような業務を担当されているのですか?
餅田さん:総務部施設課では、大きく3つの役割を担っています。1つ目は、既存建物の維持管理です。立教大学には池袋キャンパスのほか、新座キャンパス、富士見総合グラウンド、横須賀の原子力研究所があり、全体で約100棟ある建物の維持管理を行っています。東京歴建に選定されているレンガ造りの建物のみならず、すべての建物について対応しています。

 2つ目が将来計画の推進です。大学全体のマスタープランの構築から建て替えや新築の計画立案・実行まで、キャンパス全体の魅力をいかに維持し、さらに向上させていくかがテーマです。

 3つ目は、環境やカーボンニュートラル、固定資産管理、化学物質管理、行政対応、電気・ガス・水道等の対応など建物に関わる事務的な業務です。これらを職員と業務委託スタッフなど含め約20名で業務を進めています。
東京歴建に選定された建物群に関わる魅力や課題はどのようなものですか?
餅田さん:池袋キャンパスでは、6つの建物が東京歴建に選定されています。本館は今も校舎として利用しており、礼拝堂では日々の礼拝のほかにもパイプオルガンのコンサートなども行われています。第1食堂は今も多くの学生が利用しているほか、一般の方も利用できます。メーザーライブラリー記念館や2号館、3号館については建設当時の役割とは変わっているものの、外観の雰囲気は昔と変わっていません。

 こうした歴史ある建物に囲まれて働けるのは幸せなことです。古い建物を維持管理していくのは大変なことですが、それ以上にやりがいを感じます。加えて新しい建物をキャンパス全体に調和させていくことも重要な仕事です。例えば新築の建物も外観にはレンガタイルを使用するなど、デザインコードを踏襲しながらキャンパスメイキングをしていくのは立教大学ならではのこだわりだと思います。

100年先も使い続けられる建物へ

立教大学の建物群が東京歴建に選定された経緯を教えてください。
餅田さん:1983年に日本建築学会からいただいた「一通の文章」がきっかけだそうです。「立教大学の校舎は貴重であり、今後とも大切に使用してほしい」という内容を受け、その後「立教大学近代建築調査委員会」が立ち上げられました。その流れで建物の耐震化を行っていくことが決まり、1996年、日本建築防災協会内に「立教大学組積造建物耐震保全検討委員会」が設置されました。その委員会が耐震診断、対策の検討などを行い、耐震化を段階的に進めていく中で、それぞれの建物が東京歴建に選定されることになりました。

 私が入職した2001年頃は、耐震工事がちょうど進められているときでした。学内はもちろん、学外有識者の協力も得ながら検討を行い、非常に忙しかった時期だったと記憶しています。学生や職員が使い続けることを踏まえて最適な手段を決めることが難しかったそうです。例えば礼拝堂は免震構造、メーザーライブラリー記念館は耐震補強と、それぞれの建物に適切な手段を選んでいます。さまざまな有識者からの意見やアドバイスを集約し、最終的に何がベストかを決めていくことは容易ではなかったと思います。
東京歴建に選定されたことでの変化はありましたか?
餅田さん:東京歴建に選定された6つの建物は、立教大学のシンボルです。ありがたいことに「このキャンパスで学びたい」と受験される方もいますし、歴史的建造物を研究する学生が施設課に話を聞きに来ることもあります。東京歴建選定後はそういった方々がさらに増え、より注目されるようになり、定期的にテレビの取材やロケもあるなど、世間からの注目度も高いと感じます。
歴史的建造物の維持管理で特に留意されていることは何ですか?
餅田さん:例えば窓枠の木製建具は定期的に塗料を塗り直す必要がありますし、時計台を覆うツタも時計の針に絡まらないよう剪定しなければなりません。そうした細々とした対応はありますが、歴史的建造物への一般的なイメージとは異なり、レンガ建築は意外と手間のかからない合理的な建物だと感じています。

 とはいえ、時間が経てば少しずつ不具合は出てきますから、建物ごとにやり方を考えながら維持管理を行っていく必要があります。2010年代に本館のバリアフリー工事を行ったように、時代のニーズに合わせた改修は今後も求められるでしょう。外観の維持はもちろん、ずっと使い続けられることを軸に守っていく。「歴史的な赤レンガ建築が残っていていいね」ではなく、その中で学べるという価値を私たちはずっと大切にしていきたいです。

未来へつなぐ歴史的景観

With!東京歴建PROJECTへの期待や今後の展望についてお聞かせください。
餅田さん:既存の建物を維持管理したり、リニューアルしたりしながら使い続けていくことはSDGsやカーボンニュートラルにつながります。古い建物ならではの良さや活用方法を、どんどん発信してもらえたらと思います。古くなったら捨てるのではなく、どうすれば使い続けられるのかを考える。特に若い方々にそういった感性を育んでいくためにも、東京歴建やこのプロジェクトをうまく活用してほしいです。

 一方で、歴史的建造物の維持管理には費用が掛かります。昨今の建設資材高騰の影響から、我々に限らずどの所有者、運営者のみなさんも苦労されているでしょう。立教大学でも東京歴建の2号館・3号館は瓦の葺き替えを行う必要があるのですが、当初予算を大幅に上回ってしまい着手できずにいます。財政的なご支援もいただけるとありがたいです。
最後に、訪問者の方々におすすめの見学方法を教えてください。
餅田さん:東京歴建に選定されている6つの建物は、それぞれに特徴と魅力があります。一つひとつをじっくりと楽しんでいただくのはもちろん、ぜひキャンパス全体の雰囲気を味わってみてください。ゆっくりと学内を歩きながら、キャンパスメイキングに関わってきた方々の想いやこだわりに想いを馳せてほしいと思います。

餅田 忠 さん
学校法人立教学院 総務部副部長 兼 施設課長

立教大学 池袋キャンパス 建物詳細ページ

東京都豊島区西池袋3-34-1 website: https://www.rikkyo.ac.jp/

立教大学池袋キャンパスには、本館、メーザーライブラリー記念館、立教学院諸聖徒礼拝堂、第1食堂、2号館、3号館の6棟の赤レンガ建築があります。これらの歴史的建造物と、周囲の現代的な施設、植栽が美しく調和した景観が魅力です。1999年と2001年に6棟全てが東京歴建に選定されています。

インタビューを終えて

 池袋キャンパスの正門を通り、本館と正面から向き合ったとき、空間全体が醸し出す優雅な雰囲気に思わず息をのみました。東京歴建である赤レンガ建築の素晴らしさはもちろん、手入れの行き届いた植栽、新しい建物を含めたキャンパス全体の調和は、キャンパスに関わってきた方々の長年の努力とこだわりによって生み出されたのでしょう。ぜひ実際に足を運んでいただき、この空間を感じてみてください。

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