東京歴建の魅力

東京歴建の魅力をくわしくご紹介。

神田まつや

昭和初期にタイムスリップ!東京歴建 蕎麦処『神田まつや』の魅力

REKIKEN

 東京メトロ「淡路町駅」「小川町駅」より徒歩1分、靖国通りから少し入った通りに面して建つ『神田まつや』。神田須田町一帯には老舗の飲食店が多く残っており、そのエリアへの入口のような場所に建っています。神田を代表する老舗の蕎麦処は、開店前に行列ができるほどの人気店です。

 1927年(昭和2年)に建てられた建物は、2001年には東京都選定歴史的建造物(以下、東京歴建)に選ばれ、2003年には千代田区景観まちづくり重要物件にも指定されました。昔も今も多くの人に愛されている『神田まつや』の建物の魅力をご紹介します。
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神田まつや

東京都千代田区神田須田町1丁目13番地 website: http://www.kanda-matsuya.jp/ tel: 03-3251-1556

1884年(明治17年)創業の『神田まつや』は、関東大震災後の1927年(昭和2年)に建てられた近代和風の商家造りの建物です。松と矢をモチーフにした窓と、左右に配された二つの出入り口を持つ、均整の取れた外観が特徴的です。大正期の建築美を今に伝える貴重な建物として、2001年に東京歴建に選定されました。

明治17年創業、昭和初期の建築美を今に伝える蕎麦の名店

 『神田まつや』が創業したのは1884年(明治17年)。福島家の初代・市蔵氏が神田で創業し、福島家が二代にわたり続きました。関東大震災後、福島家から小高家に受け継がれ、初代・小高政吉が継承しました。現在の建物は、関東大震災後に新たに建て直されたもので、昭和初期の商家造りとなっています。

 小高家二代目・賢次郎、三代目・登志とお店が受け継がれ、2019年より現在の店主である四代目・孝之さんが継いでいます。もともとは機械製麺でしたが、1963年より「手打ち」に切り替え、現在も打ちたて、茹でたての蕎麦にこだわって提供しています。

 古くから受け継がれてきた『神田まつや』にはファンが多く、11時の開店前には蕎麦を心待ちにする方が行列をつくるほどです。そんな人気店の建物の特徴を見ていきましょう。

均整の取れた美しい外観

 関東大震災後に建て直された近代和風の建物は、竣工時の姿をよく留めています。建物の外観で特徴的なのは左右対称の構成です。2ヶ所に暖簾が掛けられ、出入り口が二つあるという珍しい造りです。
『神田まつや』の外観。左右対称の構成と2ヶ所の出入り口が特徴的
 左右の出入り口の上には松をかたどった窓があり、矢羽根の意匠が施されています。つまり「松」と「矢」で「まつや」を表現する遊び心のあるデザインです。
出入口上部の窓に施された松と矢のデザイン。『まつや』の店名を巧みに表現している
 入口横の窓にはかつてステンドグラスが施されており、光が差し込むとすばらしい雰囲気だったとか。残念ながら割れてしまい現在は普通のガラスに替わっていますが、店主はいつか復元したいと考えているそうです。

 外観の2階中央には「まつや」と書かれた釣行灯があり、左右には大きく「手打そば」と書かれた提灯が掛けられています。これらも歴史ある景観づくりに一役買っています。雨樋は過去に修繕されましたが、昔ながらの建物と調和するよう配慮がなされています。雨樋をよく見ると「マツヤ」の文字が刻まれているので、ぜひ確認してみてください。
『まつや』の釣行灯と『手打そば』の提灯。歴史ある風情を醸し出している

受け継がれる木のぬくもり

 続いて店内をご紹介しましょう。営業中の店内に入るとお出汁のいい香りに包まれます。約60席の店内はいつも多くのお客様でにぎわっています。にぎわう店内ですが、騒がしさをあまり感じません。店主によると、天井が高く設計されているためではないか、とのことです。
 
 天井には行灯風の大きな照明器具が設置され、格子状に組まれたデザインに思わず見とれてしまいます。入口側の壁一面がガラス張りになっており、明るさと開放感もこの建物の特徴です。
高い天井と開放的な店内。約60席あるが、騒がしさを感じさせない設計になっている
 店内奥の壁には、古い柱時計やこね鉢が飾られています。こね鉢は、二代目・賢次郎さんが購入したもので、とちの木の縦断面から切り出されています。このような樹齢の木は現在ほとんど見られず、新たに作ることは困難な貴重な品です。過去にはどうしても譲ってほしいと依頼されたこともあったそうですが、今も店内で多くのお客様を見守っています。
とちの木のこね鉢と古い柱時計。歴史を物語る貴重な調度品

受け継がれる伝統と味わい

 明治初期に創業した『神田まつや』は、江戸時代の手打ちそばの伝統を現代に継承し、今も多くの人に愛され続けています。昭和初期に建てられた木造2階建ての店舗は、当時の趣を残しながら神田須田町の景観を彩ります。

 はじめての訪問でもどこか懐かしさを感じる空間。昔ながらのこだわりが詰まった蕎麦とともにレトロな雰囲気をぜひ味わってください。

神田まつや

東京都千代田区神田須田町1丁目13番地 website: http://www.kanda-matsuya.jp/ tel: 03-3251-1556

1884年(明治17年)創業の『神田まつや』は、関東大震災後の1927年(昭和2年)に建てられた近代和風の商家造りの建物です。松と矢をモチーフにした窓と、左右に配された二つの出入り口を持つ、均整の取れた外観が特徴的です。大正期の建築美を今に伝える貴重な建物として、2001年に東京歴建に選定されました。

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