東京歴建の魅力

東京歴建の魅力をくわしくご紹介。

曙湯

宮造りの技が光る老舗銭湯|東京歴建『曙湯』

REKIKEN

 雷門や浅草寺などの観光名所から北へ数分歩くと、中高層ビルに囲まれた中に威風堂々とした外観が印象的な建物が現れます。昭和23年(1948年)に建設された銭湯『曙湯』は、今も現役の老舗銭湯として地域住民をはじめ多くの方々の憩いの場所です。

 2025年10月に東京都選定歴史的建造物(以下、東京歴建)に選定された『曙湯』は、建設当時の職人のこだわりを大切に守りながら、新たな文化の発信地としての役割を担おうと取り組んでいます。単なる入浴施設にとどまらない歴史的建造物としての魅力や目指す未来をご紹介します。
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曙湯 建物詳細ページ

台東区浅草四丁目17番1号 website: https://akebonoyu.com/

1948年に建設された宮造りの銭湯。唐破風の軒先に鶴と松が彫られた兎毛通しなど、宮大工の技術が活きた建築意匠と、浅草寺から受け継いだ藤の木が特徴ある景観を形成しています。地域のランドマークとして、2025年10月に東京歴建に選定されました。

600軒もの銭湯建築を手がけた工務店の自信作のひとつ

 東京都台東区浅草にある『曙湯』は、昭和23年(1948年)に建設されました。手がけたのは、戦後から平成初期までの約40年で600軒もの銭湯をつくった鈴和建設(旧 鈴木工務店)です。創業者が宮大工のいる工務店で十数年修行したこともあり、『曙湯』も宮造りの技術が活きた建物です。

 開業以来、『曙湯』は地域住民をはじめ多くの方々に愛されてきました。2010年の耐震補強工事のほか、改修やリニューアル工事も何度か実施されてきましたが、建設当時の雰囲気をできるだけ未来に残そうと大切に守られており、その姿勢は建物のあちこちから感じられます。

 前の運営者が高齢になったことから、2025年8月より株式会社yueが運営を担っています。こうした歴史を持つ『曙湯』は、2025年10月に都内の複数の銭湯とともに東京歴建に選定されました。ここからは、その魅力に迫ります。

威風堂々とした宮造り建築と藤棚

『曙湯』の魅力は、なんといっても外観です。宮造りの建物は威風堂々とした雰囲気があり、正面から見るとシンメトリーの美しさが際立ちます。ぜひ道路の反対側から全体像をご覧ください。
威風堂々とした宮造りの外観。藤棚が建物を彩る
 正面の屋根を覆う藤棚も見逃せません。藤の花の見頃は4月下旬から5月初旬ですが、満開期間はとても短いため、タイミングを見計らって訪れることをおすすめします。藤の木の緑が生い茂る初夏以降も美しい景観が楽しめます。

 この藤の木は、浅草寺に植えられていたものです。浅草寺の敷地内にあったひょうたん池が埋め立てられる際、池の周辺に植えられていた藤の木2本のうち1本を『曙湯』で守ってほしいと依頼されました。以来、大切に維持管理されており、現在は台東区の景観重要樹木に指定されています。
浅草寺から受け継いだ藤の木。台東区の景観重要樹木として大切に守られている
 正面入口に近づいて屋根を見上げると、唐破風(からはふ)の軒先に鶴と松が彫られた装飾「兎毛通し(うのけどおし)」が目を引きます。兎毛通しは、屋根の木材の先端を風雨から守るとともに、火除けを願う装飾です。『曙湯』に残るものは鈴和建設の職人が建設当時につくったものです。
鶴と松が彫られた「兎毛通し」。火除けを願う装飾として今も残る

職人の技が光る内装と、時代に合わせた空間づくり

 正面入口から中へ入ると、下駄箱エリアでは孔雀のタイル絵が出迎えてくれます。欄間とともに職人の技が光る繊細な装飾で、現代では再現が難しいといわれています。
繊細な孔雀のタイル絵が出迎えてくれる
 中に進むと右手にカウンターがあり、正面奥には休憩スペースがあります。空間を広々と感じさせる高い天井は、木を組んで格子形に仕上げた格天井で、宮大工の技術が用いられています。天井に描かれた花の絵は、建設当時に職人が手がけたものです。
花の絵が描かれた格天井。宮大工の技術が活きている
 正面入口から左奥へ進むと、お休み処があります。もともとは男性専用でしたが、男湯の脱衣所を改装して男女ともに利用できるようになり、入浴後に家族やカップルでくつろぐ姿が見られます。ゆっくりお風呂につかった後、ここで牛乳を飲んだりのんびり過ごしたりしながら、建物の歴史を味わってみてはいかがでしょう。
男女ともに利用できるお休み処。入浴後のくつろぎの場となっている

浅草らしさと遊び心が光る浴室

 続いて浴室を紹介します。『曙湯』の壁絵は、男湯、女湯ともに浅草と隅田川をイメージしたポップなデザインです。雷門やスカイツリーなど浅草を象徴する風景に加え、ゴジラが口から隅田川を吹き出す遊び心あふれるデザインが目を引きます。
男湯側はゴジラが隅田川を吹き出すユニークなデザイン
 洗い場にある鏡の横には、地元・浅草のお店の「鏡広告」も掲示されています。昭和レトロの趣を感じさせるデザインで、白を基調とした浴室に彩りを加えています。
昭和レトロなデザインの「鏡広告」。地元のお店を紹介している

時代とともに歩む『曙湯』

『曙湯』では近年、さまざまな新しい取り組みを進めています。朝6時から9時までの朝風呂を始めたところ好評を得ているほか、ビール会社やスポーツ用品メーカーとコラボレーションし、お風呂上がりにビールを楽しむイベント、浅草周辺を観光地ランしてからお風呂でくつろぐイベントなどを企画・実施しました。

 SNSやホームページでの情報発信にも力を入れており、従来からの常連のお客様に加えて、若い方や外国人観光客の方も増えているそうです。

 建設当時の姿を大切に守りながら、時代に合わせた変化を重ねることで、『曙湯』は新たなファンを獲得し続けています。訪れた際は、外観を楽しむだけでなく、ゆっくりと湯船につかりながら建物が持つ歴史と雰囲気を体感してみてはいかがでしょう。
ゆっくりとくつろげる浴槽。浅草らしい壁絵が目を楽しませてくれる

東京歴建を未来へつなぐために

 歴史的建造物の保存や修復には多くの費用が必要です。東京都は社会全体で東京歴建を支援するため、東京都防災・建築まちづくりセンターの「東京歴史まちづくりファンド」による助成を通じて保存などの支援を行っています。貴重な建造物を未来へ引き継ぐため、引き続き皆様のご協力をお願いいたします。

曙湯 建物詳細ページ

台東区浅草四丁目17番1号 website: https://akebonoyu.com/

1948年に建設された宮造りの銭湯。唐破風の軒先に鶴と松が彫られた兎毛通しなど、宮大工の技術が活きた建築意匠と、浅草寺から受け継いだ藤の木が特徴ある景観を形成しています。地域のランドマークとして、2025年10月に東京歴建に選定されました。

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