東京歴建の魅力

東京歴建の魅力をくわしくご紹介。

上智大学一号館

レンガと時が紡ぐ物語 〜東京歴建・上智大学一号館の建築美〜

REKIKEN

 JR中央線・丸ノ内線・南北線が交わる四ツ谷駅を出てまもなく、上智大学のキャンパスが広がります。聖イグナチオ教会の傍らを通り、ソフィア通りを進むと、正門の奥に壮大な赤レンガ造りの『上智大学一号館』が姿を現します。

 2024年6月14日、東京都選定歴史的建造物(以下、東京歴建)に選定された同館は、大正から昭和初期にかけて日本各地のカトリック教会を手掛けたスイス人建築家マックス・ヒンデルによる貴重な建築作品です。創建から約90年、教育の場として学生たちを見守り続けるこの歴史的建造物の魅力に迫ります。
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上智大学一号館

千代田区紀尾井町7番1号 website: https://www.sophia.ac.jp/jpn/ tel: 03-3238-3111

上智大学四谷キャンパスのランドマークとして親しまれる「上智大学一号館」。1932年に建設された同館は、2024年に東京都選定歴史的建造物(以下、東京歴建)に選定されました。

関東大震災を乗り越え、新たな学び舎として

 上智大学の歴史は1912年、カトリック修道会イエズス会が高嶋鞆之助子爵邸とその隣接地を取得したことに始まります。当初の赤レンガ校舎は1914年に完成しましたが、関東大震災により倒壊。1928年の大学令により大学に昇格したことを機に、より多くの学生を収容できる校舎として、現在の一号館が1932年に竣工されました。

 第二次世界大戦下の東京大空襲も乗り越え、その後も幾度もの補修を重ねながら、現役の教室として活用され続けています。
時代とともに補修されたレンガの色合いの違いが、建物の歴史を物語る

建築美が織りなす歴史の証し

 地上4階、地下1階の堂々たる規模を誇る一号館は、1階に花崗岩のルスティカ積み、2階以上の壁面には赤色二丁掛けタイルを配した、鉄筋コンクリート造校舎としては極めて個性的な外観を持ちます。

 正面1階の窓周辺には、ゴシック様式の幾何学模様を持つ褐色のテラコッタや、レリーフの施された焼き物装飾が、建物に気品ある表情を添えています。各レンガの表面に刻まれた縦筋は、この時代の建築物ならではの特徴です。
縦筋の入ったレンガと、ゴシック様式の装飾が調和した1階部分
 建物にはかつてボイラー室があり、その名残としてレンガ造りの煙突が残されています。現在は使用されていませんが、煙突にまで意匠を凝らした建築家のこだわりがうかがえます。また、レトロな印象を醸し出す雨どいも、見た目のイメージを損なわないよう、取り換えるのではなく補修を重ねながら大切に使われています。
建物の個性を際立たせる、かつてのボイラー室の煙突

時を超えて受け継がれる空間

 建築当時からの重厚な扉をくぐると、石造りと木製の階段が目に入ります。入口の階段付近には、かつての荷物用エレベーターの痕跡が残されています。高さ約1メートルのこの設備は、地下の食堂へ食材を運ぶために使用されていたと考えられています。
「1号館」の看板が迎える重厚な玄関
 半階上がった1階の廊下は、創建時の面影を残すタイル張りの床です。廊下の中央に掛かる時計は、長年の歴史を刻み続け、今では卒業式の記念撮影スポットとして親しまれています。館内には40人程度を収容する教室が多く配置され、あえて残された黒板とともに、当時の学びの場の雰囲気を今に伝えています。
長年の歴史を刻み、卒業生の思い出の場となっている廊下の時計
少人数制教育の伝統を今に伝える、40人収容の教室

未来へ紡ぐ歴史的建造物の価値

 四ツ谷駅近くという都心の立地にありながら、約90年の歴史を刻む赤レンガの建造物と現代的な景観、そして豊かな緑が調和した独特の空間を創出している上智大学一号館。日常の教育活動の場として活用されながら、クリスマスシーズンには電飾が施され、学生たちによる点灯式も行われるなど、現代の大学生活の中でも重要な役割を果たしています。

 歴史的価値と現代的な活用の両立を実現したこの建物は、都市における歴史的建造物の保存と活用の優れた実例として、2024年の東京歴建選定につながりました。ぜひ一度足を運び、90年の歴史が紡ぐ物語に触れてみてはいかがでしょうか。

上智大学一号館

千代田区紀尾井町7番1号 website: https://www.sophia.ac.jp/jpn/ tel: 03-3238-3111

上智大学四谷キャンパスのランドマークとして親しまれる「上智大学一号館」。1932年に建設された同館は、2024年に東京都選定歴史的建造物(以下、東京歴建)に選定されました。

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