東京歴建の魅力

東京歴建の魅力をくわしくご紹介。

小笠原伯爵邸(旧小笠原邸)

昭和初期のレトロモダンを感じる!東京歴建『小笠原伯爵邸』を訪問

REKIKEN

都内を歩いていると、ふいに時空を飛び越えたような趣のある建物に出会い、驚くことがあります。
今回ご紹介する『小笠原伯爵邸(旧小笠原邸)』(以下、『小笠原伯爵邸』)は、まさにそのような建物です。

東京都は、歴史的な価値を有する建造物のうち、景観上重要なものを「東京都選定歴史的建造物(以下、東京歴建)」に選定しています。
『小笠原伯爵邸』は、2004年に東京歴建に選定され、都心に残る名建築として大切にされ続けています。

都営大江戸線「若松河田駅」河田口を出て後ろを振り返ると、メインエントランスが姿をあらわします。
昭和初期に建てられたスパニッシュ様式の館を探検していきましょう。
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小笠原伯爵邸(旧小笠原邸)

東京都新宿区河田町10-10 website: https://www.ogasawaratei.com/ tel: 03-3359-5830 fax: 03-3359-5831

『小笠原伯爵邸』、レトロモダンへの入口

都営大江戸線「若松河田駅」河田口から徒歩1分。
閑静な街並みに囲まれた『小笠原伯爵邸』は、内外観ともに美しく洗練された建物です。

建物が完成したのは昭和2年、旧小倉藩主であった小笠原家の30代当主・小笠原長幹の本邸としてつくられました。
スパニッシュ様式で構成された外観は、スペイン瓦や特性のタイルで壁面が装飾され、優美な雰囲気を醸し出しています。

設計したのは、当時最盛期を迎えていたといわれる、日本初かつ戦前最大の民間建築事務所「曽禰中條建築事務所(そねちゅうじょうけんちくじむしょ)」

かつて伯爵夫妻が過ごした小笠原伯爵邸ですが、戦後はGHQに接収されました。
その後、東京都が所有し福祉局中央児童相談所としての役割を担いましたが、その役割を終えた後は老朽化が進み、廃墟と化していました。

そこで「PFI(Private Finance Initiative)」(公共施設の建設や維持管理、運営などに民間の資金やノウハウを活用する手法)が採択され、公募により選定した民間事業者により、歴史的建造物として再生・利活用が図られることになりました。
このような経緯で、約1年半の修復工事期間を経て、2002年6月に『小笠原伯爵邸』は長い眠りから甦ったのです。

それでは早速、レトロモダンの世界に足を踏み入れてみましょう。

当時の流行を取り入れたスパニッシュスタイルの外観

メインエントランス。これまでどのような人々を迎え入れてきたのでしょうか。
まずは外から『小笠原伯爵邸』を眺めてみます。
外観はスパニッシュスタイルで構成され、クリーム色の外壁とエメラルドグリーンのスペイン瓦が目を引きます。
メインエントランスのキャノピー(外ひさし)は葡萄の蔦や葉、実などがデザインされ、遊び心のあるデザイン。
見ていると、建物が多くの人々と過ごしてきた日々が目に浮かんでくるようです。
メインエントランスのキャノピー。葡萄の蔦や葉、実などがデザインされています。
メインエントランスの左手の道を進んでみましょう。
すると突然、緑豊かなガーデンが目の前に広がります。
オリーブやバラ、アーモンドなど四季折々の花が咲き誇るガーデンは、その時々の異なる表情を見せてくれます。
シガールーム外壁。植物とのコントラストが美しく、中から見るのとはまた違った雰囲気です。
<ここに注目!>
ガーデン側から建物を眺めると、右手に外壁の色鮮やかなタイルが目に入ります。
この外壁は、古陶磁の色使いにおいては日本の第一人者といわれる小森忍さんの作品です。

テーマは「生命の賛歌」
中央には太陽が輝き、ハートや花、葡萄などがデザインされています。
修復前、ほとんどのタイルが剥がれ落ちている状態でした。
外壁からタイルの形を写し取り、一つひとつのパーツを丁寧に作り直す修復工事を経て甦りました。
昭和初期にこのようなかわいらしい外壁の邸宅に住んでいたなんて、伯爵はどのような方だったのでしょう。
外壁には、「曽禰中條建築事務所」の定礎も残っています。
ふと歴史を感じる瞬間です。

まさに昭和初期の世界、時代をまたいで邸宅内へ

邸宅内に足を踏みいれると、別世界が広がります。

メインエントランスからロビーを通り抜けると、右手にパティオ(中庭)、左手に食堂として使われていた部屋があらわれます。
この旧食堂にある大テーブルは、建設当時から唯一残された家具、つまり実際に伯爵家が使っていたものです。
はからずとも、当時の食卓が目に浮かぶよう。
中央の大テーブルは唯一残っていた伯爵が住んでいた時代の家具
竣工時の食堂。当時どんな会話が繰り広げられたのでしょうか。 (出典:小笠原伯爵邸)※転載禁止
どんどん足を進めていきましょう。
旧食堂の先は、ラウンジにつながっています。
ここにあるインテリアは、総支配人自らがトルコからヨーロッパなど世界中を巡り、竣工当時の写真をもとにしながらアンティークを一点ずつ買い集めたものだそうです。
中央のシャンデリアをはじめ、総支配人自らが海外で買い付けてきた家具にも注目。
竣工時のラウンジ。この写真を参考にできるかぎり雰囲気を近づけて修復したそうです。 (出典:小笠原伯爵邸)※転載禁止
中央には、日本初のステンドグラス作家といわれる小川三和さんの作品が残っています。
修復しながら大切に使われてきたステンドグラスを感じてみてください。
このように繊細なステンドグラスが昭和初期から残っていることに驚かされます。

厳かな雰囲気のシガールームは何を見てきたのだろう

シガールーム。漆喰彫刻に彩色を施した壁面、大理石の柱や床など見どころがたくさん。
ラウンジから更に奥に進むと、シガールーム(喫煙室)として使われていた空間があります。
どこか厳かな雰囲気を感じるイスラム風の部屋は、他の部屋とは一味違った空間です。
内壁の装飾や、大理石の柱や床は当時のものを修復して使用しています。

現在は禁煙となっていますが、当時この部屋では煙草をふかしながらどのような会話がなされたのでしょうか。
シガールームは『小笠原伯爵邸』で一番人気のフォトスポットです。
ここで一枚、写真撮影!
竣工時のシガールーム。現在の写真と見比べると、忠実に再現されていることが分かります。 (出典:小笠原伯爵邸)※転載禁止

メインダイニング、伯爵の暮らしへ想いを馳せる

いよいよメインダイニングへ足を踏み入れてみましょう。
シガールームからラウンジに戻り再び足を進めると、現在はレストランとして利用されているメインダイニングが姿をあらわします。
ここは、伯爵の書斎と寝室だった空間です。

レストランを利用される方は、シェフが腕によりをかけたスペイン料理を楽しめます。
伯爵家の暮らしに想いを馳せながら、ぜひ特別なひとときをお過ごしください。
レストランの様子。素敵な空間で庭園を眺めながら、美味しい料理を楽しめます。
『小笠原伯爵邸』のスタッフは、働き始めるとまずは建物の歴史を学ぶのだそう。
邸内で気になる点があれは、気軽に質問してみてください。

パティオ(中庭)に出て、思いおもいの時間を過ごす

『小笠原伯爵邸』の特徴の一つが、パティオ(中庭)を囲んで建物がロの字型になっていること。
暖かい季節にはパティオで、読書をするのも趣があります。

パティオには立派な「モッコウバラ」が植えてあり、毎年開花のタイミングを見計らって予約されるお客様もいらっしゃるそう。
運が良ければ、見頃のタイミングに遭遇できるかもしれません。
スペイン建築の特徴の一つであるパティオ(中庭) (出典:小笠原伯爵邸)※転載禁止
モッコウバラが見頃を迎えるのは春。黄色と白の花が咲き誇る様子をぜひ。 (出典:小笠原伯爵邸)※転載禁止
パティオにある階段を登っていくと2階の屋上庭園に出られます。
屋上からガーデンを一望してみましょう。季節の花や植物に囲まれた『小笠原伯爵邸』の雰囲気を感じられます。
パティオ(中庭)の階段。屋上にはどのような風景が待っているのでしょうか。
2階には、ウエディングで利用される控室などもあり、1階の各部屋とはまた違った雰囲気です。
当時どのように使われていた部屋なのかを想像してみるのもいいですね。
優しい色の落ち着く空間。2階の部屋はウエディングの控室として利用されています。

『小笠原伯爵邸』の魅力を体感しましょう

訪れて感じたのは、細やかな修復によって当時の雰囲気を鮮明に甦らせているということです。

『小笠原伯爵邸』は、インターナショナル青和株式会社が東京都から借り受け、修復しながら運営管理を行っています。
館内のいたるところから、みなさんの徹底したこだわり、そして建物に対する想いが伝わってきました。

『小笠原伯爵邸』を見学したい方は、レストランまたはカフェを利用してじっくりと雰囲気を感じるのがおすすめです。
ぜひ実際に訪れてみてください。

小笠原伯爵邸(旧小笠原邸)

東京都新宿区河田町10-10 website: https://www.ogasawaratei.com/ tel: 03-3359-5830 fax: 03-3359-5831

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