東京歴建の魅力

東京歴建の魅力をくわしくご紹介。

日証館

時代を超えて街をつなぐ|東京歴建『日証館』が伝える兜町の記憶

REKIKEN

 東京証券取引所がある日本橋兜町は、「日本のウォール街」とも呼ばれる金融の街です。このエリアの北端、日本橋川沿いに、約100年の歴史を持つ建物があります。それが、2024年12月に東京都選定歴史的建造物(以下、東京歴建)に選定された『日証館』です。品格ある外観が特徴の『日証館』の歴史と魅力に迫ります。
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日証館 建物詳細ページ

東京都中央区日本橋兜町1-10

1928年、渋沢栄一邸跡地に建てられた「日証館」は、横河工務所の代表的な建築作品です。アーチ状の開口部が連なる重厚な外観が特徴で、震災復興を象徴する建物として日本橋兜町の歴史的景観を今に伝えます。2024年12月に東京歴建に選定されています。

渋沢栄一邸跡地に建つ、震災復興を象徴する建物

『日証館』が建つこの場所には、かつて渋沢栄一の邸宅がありました。1923年の関東大震災により邸宅が全焼した後、1928年に東京株式取引所の付属施設として建設されたのが、東株ビルディング(現:日証館)です。震災後、焼け野原となった兜町では防火性や耐震性を高めた建物の建築が相次ぎ、『日証館』はその復興を象徴する建物の一つとなりました。

 設計を手がけたのは、建築家・横河民輔が設立した横河工務所(現:横河建築設計事務所)です。三越日本橋本店や日本工業倶楽部会館など、多くの著名建築を手がけた同所の代表的な建築作品となっています。

 耐震補強工事などリノベーションを重ねながら、竣工から100年近くが経った今でも外観・内装ともに維持管理されています。1947年、日本証券取引所の解散に伴い、証券取引所施設の賃貸・管理会社として平和不動産が設立され、『日証館』を所有するとともに本社を置きました。
震災復興を象徴する『日証館』。アーチ状の開口部が特徴的

アーチ状の開口部が連なる、品格ある外観

『日証館』は、白を基調とした重厚な佇まいが特徴です。近世式(ネオ・ルネサンス様式)を採用し、三層構成の外観となっています。

 1階はアーチ状の開口部が連なるデザインで、4階と6階の窓にもアーチ状の窓が用いられています。竣工時は6階建てでしたが、その後7階部分が増築されました。全体的に装飾は少なめで、そのシンプルさが重厚な印象をさらに際立たせています。

 1998年からのリニューアル工事では、外壁に修復が施されました。外壁は一見すると石積みのように見えますが、実は石目調の吹付で仕上げられています。現地を訪れた際は、ぜひ間近でご覧ください。
『日証館』の文字が刻まれたアーチ上部

歴史を感じるエントランスホール

 アーチ状の正面玄関をくぐると、エントランスホールが広がります。『日証館』には今も多くの企業が入居していますが、エントランスホールは平日の日中は一般公開されており、誰でも見学可能です。

 床や壁に大理石が使用され、厳かな趣があります。リニューアル工事の際に一部貼り替えられていますが、竣工当時の意匠と調和するよう、細やかな検討を重ねて今の姿となっています。
大理石が使用されたエントランスホール。厳かな空間が歴史を感じさせる
 正面入り口から見て右手の壁には、訪問者のためのガイド展示があります。旧渋沢栄一邸の外観や竣工時の外観、日本橋川からの景観など、歴史を伝える写真が並んでいます。奥の階段を少し登ると、踊り場にある窓から日本橋川を望むことができます。川沿いの建物であるため、設計の際は川側からの景観も考慮されました。
エントランスホール奥の階段。川側からの景観も考慮して設計された
 正面入り口から見て左手には、歴史を感じるデザインのポスト(郵便箱)があります。このポストは現役で、各階からメールシューターを通して投函することも、1階のポストに直接投函することもできます。入居企業はもちろん、一般の方も利用できる郵便ポストとして活用されています。
美しいデザインのポスト。現役で活躍している

東京歴建『日証館』が、未来の街づくりの起点に

『日証館』に本社を置く平和不動産は、「投資を、そして感性を一歩先へ。この街から、新しい風を。」という街づくりビジョンを掲げ、日本橋兜町・茅場町エリアの街づくりに取り組んでいます。東京歴建である『日証館』は、その起点となっています。

 歴史ある建物を維持・管理するだけではなく、アーチ状の開口部が特徴の1階をリノベーションし、チョコレート&アイスクリームショップなどのテナントを誘致しました。人々が思わず足を運びたくなる仕掛けをつくり、エリアの賑わいづくりを進めています。

 多くの方々によって守られてきた歴史的価値を大切にしながら、新たな魅力を加えることで未来の街づくりに貢献する『日証館』。過去・現在・未来をつなぐこの東京歴建に、ぜひ足を運んでみてください。
アーチ状の開口部を活かしたショップ。街の新たな魅力となっている

東京歴建を未来へつなぐために

 歴史的建造物の保存や修復には多くの費用が必要です。東京都は社会全体で東京歴建を支援するため、東京都防災・建築まちづくりセンターの「東京歴史まちづくりファンド」による助成を通じて保存などの支援を行っています。貴重な建造物を未来へ引き継ぐため、引き続き皆様のご協力をお願いいたします。

日証館 建物詳細ページ

東京都中央区日本橋兜町1-10

1928年、渋沢栄一邸跡地に建てられた「日証館」は、横河工務所の代表的な建築作品です。アーチ状の開口部が連なる重厚な外観が特徴で、震災復興を象徴する建物として日本橋兜町の歴史的景観を今に伝えます。2024年12月に東京歴建に選定されています。

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